日本語の連体修飾語の漢訳について

2014-12-23 11:34潘存坤
科技视界 2014年3期
关键词:例文日本

潘存坤

(西南交通大学,四川 成都 610036)

1 日本語の連体修飾とは

日本語の文を構成するには、主語、述語、目的語、修飾語などの要素が必要である。修飾語は名詞や代名詞、形式名詞(叙述の便宜上、名詞や代名詞、形式名詞を総括的に「名詞」と呼ぶ)などを修飾する連体修飾と、動詞、形容詞を修飾する連用修飾に分けられている。いわゆる連体修飾は、名詞は文の中のほかの成分によって修飾された文法用語である。その連体修飾は、語句による連体修飾と節による連体修飾に分けられる。日本語の連体修飾の構造を分かりやすく説明するために、下の図で示す。(「—」線で表記した部分は修飾成分であり、「=」線で記した部分は被修飾成分である)。(『インガ』

例文(1)は一語の形容詞「寒い」で「冬」に対して修飾しているものである。これは語句による連体修飾の類である。例文(2)の「花子が買った」は独立した節として「カメラ」に対して修飾しているものである。例文(3)の「輝いた」と「楽しそうな」は並列の節として「微笑」に対して修飾したものであるが、例文(2)も(3)も節による連体修飾の類に属したものである。

2 日本語の連体修飾語の漢訳

中日両言語は修飾語(定語)が名詞の前に位置するという点が同じなので、日本語の簡単な連体修飾語は多くの場合、中国語に直訳できる。しかし、すべての日本語の連体修飾語は中国語に直訳できるとは限らない。その原因は、両言語にはそれぞれの言語慣習と規則の相違点が存在しているのである。

2.1 連体修飾と定中構造の言語慣習における異同

日本語の連体修飾と中国の定中構造の言語慣習における異同があるため、漢訳に影響を与える。

2.1.1 同じのところ

下の例文を比較してみる。

(4)東京までの新幹線が出発した。

訳文:开往东京的新干线已经出发了。

例文(4)訳文から見ると、両言語の下線部は対応している。両言語とも連体修飾語(定語)が名詞に付き、前置形連体語を使う。この点が同じなので、日本語の連体修飾語は中国語の「定語」に直訳できる。日本語の語順は主語が文の冒頭に位置し、目的語が述語の前に来るのである。つまり、日本語の文の語順が「SOV」型である。目的語が述語の前に来ることは日本語の最大の特徴である。たとえば、花子は本を読む(主語—目的語-述語)。これと違う中国語(花子读书)は、謂語(述語)が賓語(目的語)の前に置かれる言語である(SVO型)。ところで、両言語の修飾語は被修飾の前に来るから、例文(4)のような簡単な連体修飾語は中国語の「定語」に直訳できる。だから、例文(4)は成立できる。

2.1.2 違うところ

簡単な連体修飾語の漢訳は簡単であるが、多く場合、日本語の文の中での連体修飾語はいくらの文節からなる複雑なものである。下の例文を見よう。

(5)a学校に行くのを嫌がって、b家でテレビゲームやっているc生活を二年も繰り返したd中学三年の郁夫が、いつの間にか父親とも母親とも全く話をしなくなってしまいました。(段銀萍『天津外国語学院学報』)

訳文:?不愿去上学,总是在家玩儿游戏的生活过了两年的中学三年级的郁夫,不知道从什么时候开始完全不跟父母说话了。——直訳

(6)a肩にカバンをかけて、b白い帽子の下に赤い顔をしているc可愛い坊やが南の方からやってきた。(厖春蘭『新編日漢教程』)

訳文:?肩上背书包,戴着白帽子,红脸的可爱的男孩从南边过来了。

———直訳

以上の例文(5)と(6)は、二つ以上の文節からなる複雑な連体修飾語の文である。直訳した文(不自然の訳文は「?」で示す)の下線部は分かりにくい中国語である。日本語の連体修飾語は中国語の「定語」と強い対応関係があっても、言語慣習の原因で、完全に対応できない。すなわち、あらゆる連体修飾語は中国語の「定語」に直訳できるわけではない。

日本語には、このような複雑な連体修飾語の文がよく見られる。それに比べ、中国の「定語」が短い。この現象が生まれる原因は両言語の文法上の相違点がある。言語形態上の分類では、日本語は粘着語に属するので、文法的な関係を表す格助詞や動詞、形容詞などの活用を借りて、複雑な連体修飾語となりやすい。それに対して、孤立語に属する中国語は、日本語のような格助詞が全くない、語順と「虚詞」によって、文法的な関係を表す。それで、中国の「定語」があまり長くない。例文(5)と(6)訳文の「定語」が長くて複雑すぎるから、文の意味が理解しにくいのである。

2.2 連体修飾と定中構造の使用規則における相違

中日両言語は言語慣習上の相違点があるほかに、言語規則の上では、違うところもある。学習者はその相違点が分からないと、誤訳しやすいのである。

(7)思い出せば、子供が0歳、一歳の時、名古屋に転職した私は、子育てが楽しいと思えなかった。むしろ、毎日涙を流すほど辛かった。

訳文1:?回想起来,孩子未满1岁和1岁时,调到名古屋工作的我,那时不觉得孩子是件愉快的事情,相反感到很痛苦,每天以泪洗面。

直訳したら、連体修飾 ⇒ 定中構造

定語(调到名古屋工作)+的+中心語(我)

訳文2:孩子未满1岁和1岁时,我调到名古屋工作,……(段銀萍『天津外国語学院学報』)

逆訳したら、連体修飾 ⇒ 主述構造

主語(我)+述語(调)+到名古屋工作

例文(7)の訳文1は、日本語の連体修飾は中国の「定中構造」に直訳されるものである。例文 (7)の中での被修飾語は人称代名詞「私」である。すなわち、日本語の連体修飾語は人称代名詞が修飾できる。しかし、中国には、「定語」が人称代名詞が修飾できないという言語規則がある。以上の直訳された訳文が中国語の言語習慣に応じなくて、「定語」の使用規則にも違反する。それで、一般的に言えば、連体修飾の被修飾語が人称代名詞であれば、連体修飾は中国語の「定中構造」に直訳できない。このような連体修飾の漢訳の場合、中国語の言語規則に応じるために、中国の「主述構造」に逆訳されなければならない。だから、例文(7)の訳文2は中国語の言語規則に相応しく分かりやすい文である。

2.3 複雑な連体修飾語の漢訳

中日両言語にはそれぞれの言語慣習と規則の相違点があるので、複雑な連体修飾語を中国語に訳す時、逆訳と分訳を使う必要がある。

2.3.1 逆訳の応用

(8)彼の首に両手をかけていつまでも泣いている彼女を抱いて、彼はただぼんやりとしている。

(下線部:連体修飾)

訳文1:?两手勾住他的脖子,苦过不停的她,他抱着她茫然若失。

(下線部:定中構造)

訳文2:她两手勾住他的脖子,哭过不停,他抱着她茫然若失。(解放軍外国語学院『日訳漢講義』)

(下線部:主述構造)

訳文1では、日本語の連体修飾は、中国の「定中構造」に直訳された。訳文の「定語」があんまり長くないが、文の意味が理解しにくくなる。訳文1と比べ、訳文2は逆訳を用いて、日本語の連体修飾を中国の「主述構造」に訳したものである。すなわち、原文の被修飾語「彼女」を主語あるいは主題に訳して修飾語を述語に訳したのである。このような訳し方は中国語の言語習慣に相応しくて、わかりやしい訳文が翻訳できる。だから、両言語慣習および規則の違いがある場合、逆訳を利用して、日本語の連体修飾を中国語の述語に訳す必要がある。

2.3.2 分訳の応用

(9)私は彼の長男である二十歳ぐらい東京の私大生という青年の訪問を受けた。

(下線部:連体修飾)

訳文1:?我接待了他的长子,二十岁,是东京某私立大学学生的一个青年的来访。

(下線部:直訳 ⇒ 長い「定語」)

訳文2:我接待了一个青年的来访。那是他的长子,二十岁,是东京某私立大学的学生。(張秀華『高級日語筆訳』

(下線部:分訳 ⇒ 短文)

訳文1では、日本語の連体修飾語は、中国語の長い「定語」に直訳されている。その「定語」が複雑で、中国語の言語慣習に相応しなくて分かりにくい。訳文2は、分訳の方法を利用して、日本語の連体修飾語は中国語の独立した短文に訳されたものである。こうすれば、意味がはっきり分かりやすい。一般的に言えば、長すぎる連体修飾語は中国語になじまない。これは日本語の連体修飾構文をばらして訳さればならぬ大きな理由である。

3 終わりに

本稿は、日本語の連体修飾語の漢訳について、日中両言語の言語慣習及び言語規則に異同点を比較し分析した上で、言語学の角度から、どんな場合、どんな翻訳方法を用いてよいかを論じてみた。日本語の簡単な連体修飾を中国語の「定中構造」に直訳すればいいが、複雑な連体修飾を中国語の「定中構造」のように訳すことができない。その理由は、両言語の言語慣習及び規則の相違点によるものである。言語慣習上、日本語は自身の特徴(粘着語)で、複雑な連体修飾語となりやすいのである。それに対して、中国語(孤立語)は複雑な「定語」となりにくいのである。言語規則上、日本語では、連体修飾語が人称代名詞が修飾できる。中国では、人称代名詞はめったり「定語」に修飾されない。それで、この二つの違い点があって、日本語の連体修飾語に対して漢訳するとき、ケースバイケースで違った処理をする必要がある。

[1]高寧·梁伝宝.新編日漢翻訳教程[M].上海外语教育出版社,1999.

[2]厖春蘭.新編日漢教程[M].北京大学出版社,2008.

[3]段銀萍.天津外国語学院学報[J].2003,5.

[4]遠藤紹徳.中文日訳·日文中訳の原点とテクニック[M].1995.

[5]金田一春彦.日本語·下巻[M].岩波新書,1988.

[6]石黒昭博.現代の言語学[M].金星堂,1996.

[7]鈴木一彦ら.研究資料日本文法[M].明治書院,昭和59年.

[8]玉村文郎.日本語学を学ぶ人のために[M].世界思想社,1992.

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